第1章|SaaSの仕組み
SaaSセキュリティリスク管理の体系と実践

2611.00010 · 公開 2026-11-07 · 更新 2026-11-07

SaaSを利用する部門と統制担当者に向けて、データ・権限・構成の把握から、共通対策、残余リスク、追加対策の判断までを説明します。管理基準と実際の状態を照合し、残る経路と必要な対応速度に応じて対策を選ぶ方法を提案します。

1 SaaSの仕組みと利用者の管理範囲

1.1 SaaSとは何か

SaaS(Software as a Service)は、事業者のクラウド上で動くアプリケーションを、ネットワーク経由で利用するサービス形態です。利用者はブラウザー、専用アプリ、プログラムから機能を使います。メール、ファイル共有、顧客管理、人事管理などが該当します。[1]

アプリケーションや基盤の運用は、主にSaaS提供者が担います。利用組織は、業務に使うデータと、そのデータを扱う利用者・権限・設定を管理します。具体的な分担は、サービスの仕様と契約で確かめます。[2]

1.2 利用組織に残る管理責任

SaaS提供者利用組織アプリケーションの提供基盤の運用・保守サービスとしての保護・復旧扱うデータと利用目的利用者・権限・共有先連携・保存・監視の設定機能を提供実施範囲を契約・仕様で確認利用条件を決め、設定に反映
図1 SaaSで利用組織が管理する範囲 一般的な役割を簡略化した図。個別の分担は各サービスの仕様と契約で確認します。
管理する側主な管理内容利用組織が確認すること
SaaS提供者サービス基盤、アプリケーションの保守、提供機能の運用。提供される保護機能、障害時の対応、復旧・データ回収の条件。
利用組織入力するデータ、利用者、権限、共有範囲、外部連携、保存条件。業務上必要な利用範囲と、実際の設定・運用の一致。

例えば、顧客の契約書をファイル共有SaaSへ保存する場合、契約書を置く場所、閲覧できる人、社外への共有方法は利用組織が決めます。これらの判断を設定に反映することが、SaaSのセキュリティ管理の出発点となります。

本書は組織向けの管理標準案です。公開フレームワーク・指針の参照箇所は本文に示します。点検周期、判定規則、役割分担は、本書の提案として扱います。

第1章|SaaSごとの違い

1.3 SaaSの利用形態は幅広い

管理方法を決めるには、まず各SaaSの用途を把握します。同じサービスでも、部門の予定調整に使う場合と、全社の機密情報を保管する場合では、事故の影響が変わります。

利用の例扱うデータ・権限重点となる管理
予定調整・簡単な申請予定、参加者、申請内容。入力する情報の範囲、公開設定、利用終了時のアカウント整理。
ファイル共有・共同作業文書、チャット、社内ナレッジ。フォルダーやページの共有、外部利用者、保存期間。
顧客・人事・財務の管理顧客情報、従業員情報、取引情報。レコード単位の権限、承認手順、外部出力、業務委託先のアクセス。
開発・業務自動化ソースコード、認証情報、他システムを操作する権限。実行権限、承認、連携先、認証情報の保管と失効。
認証・IT運用の基盤利用者ID、管理者権限、機器やサービスの制御情報。強い権限の管理、保護設定、操作記録、接続先への影響。

1.4 評価する単位と利用実態

評価は「SaaS × テナント × 用途」を単位として行います。テナントとは、そのサービス上で組織ごとに設けられる管理領域を指します。部門やプロジェクトごとに設定が分かれる場合は、その領域も記録します。

利用者数に加え、保存するデータ、権限の強さ、接続先を確認します。例えば、利用者が数人でも、全顧客のデータを取得できる連携アプリを使う場合は、広い範囲に影響が及びます。

把握する項目記録内容
業務とデータ利用目的、情報の種類、重要性、件数、業務停止時の影響。
利用者と権限従業員、委託先、顧客、管理者、連携用アカウント。
共有と外部接続社外への公開範囲、共有先、連携アプリ、接続先システム。
管理量と変化管理領域の数、個別設定の数、権限や共有先を変更する頻度。
サービスの管理機能設定の取得方法、操作記録、保護機能、契約プラン上の利用条件。

この情報をそろえると、SaaSごとの管理負荷と、事故時に影響を受ける範囲を説明できます。

第2章|管理するデータ

2 利用者が管理するデータと構成

2.1 データの取扱条件を決める

利用部門は、そのSaaSで扱うデータの取扱条件を定めます。保存する情報に加え、入力、処理、出力、外部転送の対象も含めます。条件は、情報の重要性と業務上の用途に基づいて決めます。

管理する場面利用部門が決めることファイル共有の例
入力・保存扱う情報の種類と、保存を認める領域。契約書は担当部門の管理領域に保存します。
閲覧・共有利用者、共有先、共有期間、相手の確認方法。担当者と承認された取引先に閲覧を許可します。
編集・削除変更できる人、重要な変更の承認方法。契約書の編集権限を担当者に割り当てる。
出力・外部転送ダウンロード、印刷、他サービスへの転送条件。承認済みの連携先へ、必要な文書だけを転送します。
保存・復旧保存期間、復旧対象、復旧に必要な時間。保存期間を設定し、誤削除時の復元方法を確認します。
利用終了必要なデータの回収、移行、削除の手順。必要文書を移行し、旧領域のアクセスと保存を終了します。

2.2 取扱条件を設定に反映する

データの取扱条件は、SaaS上の設定で具体化します。「取引先Aだけに共有する」という条件は、共有先の指定、本人確認、利用期限、再共有の範囲などに対応します。

実際に閲覧できる人は、組織全体の設定、フォルダーの設定、個別リンク、所属グループの権限を組み合わせて決まります。点検では、その組合せによって成立するアクセス範囲を確認します。

取扱条件対応する設定・運用確認する記録
契約書を担当者に限定します。グループ所属、フォルダー権限、個別付与を管理します。利用者と権限の一覧。
取引先への共有を期限付きにします。招待する相手と有効期限を指定します。共有先、承認記録、有効期限。
業務終了後の情報を整理します。保存期間、削除、必要な復旧方法を定めます。保存設定、削除・復旧の実施記録。

データの分類、共有先の判断、保存期間の決定は、利用部門が担当します。設定の実装は、IT部門や運用担当へ委ねることができます。

第2章|構成と担当者

2.3 管理する構成の範囲

本書では、データへのアクセスや処理を決める設定、ID、権限、外部連携、保護・監視機能と、それらの関係を「構成」と呼びます。構成を把握すると、誰がどの経路でデータを扱えるかを確認できます。プログラムからSaaSの機能やデータを利用する窓口をAPIと呼びます。

従業員部署・役割取引先・委託先招待・利用期限連携アプリ許可された操作範囲アカウント・権限外部共有・公開連携権限・認証情報SaaS内のデータ文書・顧客情報・記録対象ごとの共有範囲も管理
図2 データへのアクセスを決める構成 利用者、外部関係者、連携アプリが持つ権限を、アクセス先のデータと対応付けます。
構成の単位把握する内容管理方法
組織・テナント共通認証、外部共有、保存、ログなどの共通設定。管理対象の設定値を基準と照合します。
部門・領域・利用者領域ごとの設定、所属グループ、役割、個別付与。上位領域から引き継ぐ設定(継承)と、個別に追加された権限を確認します。
文書・レコード・連携個別の共有先、公開リンク、連携アプリの権限。一覧で確認します。件数が多い場合は一括取得や例外抽出を使います。

2.4 1線と2線の役割

SaaSを使う部門は、日々の利用とリスク管理を担う「1線」とします。セキュリティ統制部門は、共通ルールの策定と実行状況の確認を担う「2線」とします。以下の分担を本書の運用案とします。

役割担当すること作成・確認する記録
1線:利用責任者利用目的、データの取扱条件、必要な権限、是正方針を決めます。利用範囲、設定基準、承認内容。
1線:IT・運用担当設定の適用、変更、点検、是正を実施します。実設定、変更履歴、点検結果。
2線:統制担当標準を整備し、実施状況と判断の妥当性を確認します。検証結果、残余リスク、追加対策の必要性。
所定の承認者権限規程に従い、例外と残余リスクの受容を判断します。受容理由、対象、期限、見直し条件。
第3章|設定と損害の関係

3 SaaS利用に伴うリスク

3.1 設定不備はどのように損害につながるか

データの取扱条件と実際の構成に差が生じると、想定した範囲を超えるアクセスや操作が可能になります。リスクは、その状態を通じて発生し得る損害として記述します。

顧客の契約書守るデータ共有先を誤設定不備の発生外部者が閲覧可能アクセスの成立契約書を取得事象の発生秘密情報が流出業務上の損害データの性質とアクセス条件から、発生する損害を考える
図3 設定不備からデータ漏えいに至る経路 全社ファイル共有を想定した説明例。影響の大きさは文書の内容と取得された範囲によって変わります。
管理上の問題発生し得る事象業務上の損害
契約書の共有先を広く設定します。本来の共有相手以外が文書を取得します。顧客情報や契約条件の漏えい。
異動・退職後も権限が残ります。以前の担当者が引き続き業務情報を操作します。情報漏えい、誤更新、不正な変更。
連携アプリに広い権限を付与します。連携先の認証情報を得た攻撃者がデータを取得します。多数の顧客情報の流出、接続先への被害拡大。
削除や保存期間を誤って設定します。必要な文書が削除されます。業務の停止、取引や対応履歴の喪失。
管理者権限を広く付与します。誤操作や侵害により組織全体の設定が変わります。共有範囲の拡大、データ改ざん、業務停止。
必要な操作記録の保存が不足します。不審な操作の発生時点や対象の特定が遅れます。漏えい範囲の拡大、調査・復旧の長期化。

3.2 リスクを記録する単位

一つのリスクには、対象データ、原因となる状態、アクセスする主体、操作、損害を記します。この組合せを「リスクシナリオ」と呼びます。

例えば「取引先向けに共有した顧客契約書が、広すぎる共有設定によって第三者に取得される」と記録します。これにより、共有設定の修正がどの損害を抑えるのかを追跡できます。

本章の事例は、管理対象とリスクの関係を説明するための想定例です。実際の評価では、利用しているデータと取得可能な操作記録を確認します。

第3章|リスクの範囲と公開フレームワーク

3.3 構成・活動・提供者に関するリスク

適切な権限を持つ利用者による持ち出しも、SaaSのリスクに含まれます。ログイン後の利用状態(セッション)を維持する認証情報が盗まれ、悪用される場合もあります。さらに、提供者の障害や侵害は、利用組織の業務継続に影響します。これらは、構成の管理に加えて、操作の監視や復旧への備えを検討する対象となります。

構成に関する問題過大な権限意図しない公開操作・活動に関する問題正規権限の悪用連携先による不正取得侵害後の設定変更ほかに、提供者の障害・侵害や契約終了時のデータ回収に関するリスクがあります。
図4 SaaSのリスクを生む状態と活動 構成の問題と不正な活動が重なる場合を示した概念図。

3.4 SSCFを使って管理領域を整理する

CSAのSaaS Security Capability Framework(SSCF)は、提供者が利用者へ提供するセキュリティ機能を整理した枠組みです。管理領域の分類をSSCFの6領域に合わせ、各リスクに関連する領域を付けます。[3][4]

SSCFの領域利用者側で確認する内容関連するリスクの例
CCC:変更・構成管理設定基準、変更の承認、現在の設定。設定ミス、予定外の変更。
DSP:データ保護・プライバシー共有範囲、保存、削除、データの取扱条件。情報漏えい、データ喪失。
IAM:ID・アクセス管理認証、利用者、権限、連携用ID。権限の残存、不正なアクセス。
IPY:相互運用性・移植性データの受渡し、回収、移行の仕組み。利用終了時の回収・移行の支障。
LOG:ログ・監視操作記録、取得方法、保存期間。侵害の発見や調査の遅延。
SEF:事故対応・調査連絡、証跡保全、調査協力の手順。対応の遅れによる被害拡大。

表の確認内容とリスク例は、本書で利用組織向けに整理したものです。提供者の管理や事業継続まで評価する際は、CSA Cloud Controls Matrix(CCM)の関連領域を併用します。[7]

第3章|高・中・低の評価

3.5 リスクを高・中・低で評価する

各シナリオについて、損害の大きさを示す「影響」と、損害が生じる「発生可能性」を評価します。次の尺度を本書の運用案とします。評価対象期間は、評価日から12か月間とします。リスク評価の考え方はNIST SP 800-30を参照します。[6]

段階影響発生可能性
高重大な機密情報漏えい、重要取引の改ざん、重要業務の長時間停止など、組織の重要な目的に影響します。損害に至る経路が成立し、日常的な操作や一般的な攻撃機会から到達し得る。
中影響は部門や特定業務に収まるが、復旧、関係者対応、業務のやり直しが必要になります。損害に至るには、追加の操作や条件が必要となります。適用範囲の一部に対策上の課題が残ります。
低影響が限られ、通常の運用で回復できます。有効な対策により主要な経路が制限され、発生には複数の条件が重なる必要があります。

影響は、漏えい、改ざん、利用停止のそれぞれを検討し、最も高い段階を採ります。発生可能性には、実際の設定、変更頻度、アクセス条件、確認できた対策を反映します。

影響 \ 発生可能性低中高
高中高高
中低中高
低低低中

3.6 判定の根拠をそろえる

確認すること記録する内容
評価対象対象データ、利用領域、主体、操作、想定する損害。
現状設定値、権限、操作記録、既存対策の適用状況。
判定理由影響と発生可能性を各段階にした理由。
確認状況確認済みの事実と、追加確認が必要な事項。
承認と見直し評価者、確認者、評価日、再評価の契機。

確認に必要な記録(証跡)が不足する場合は、評価の状態を「未評価」として記録します。前回の評価がある場合は、その値と確認不足の範囲を併記します。重要データに関する未評価事項は、2線が追加確認を優先します。

高・中・低はリスクの段階を表します。「未評価」は確認状況として別欄で管理します。

第4章|全SaaS共通の構成管理

4 共通対策としての構成管理

4.1 承認された構成を維持する

構成管理は、管理する対象を識別し、承認された基準に従って設定と変更を管理する活動です。現状の記録、定期的な照合、差異の是正を継続します。セキュリティを構成管理に組み込む考え方は、NIST SP 800-128で示されています。[5]

全SaaSの利用部門に、この管理義務を適用します。管理する設定の項目と値は、サービスの機能と利用条件に合わせて定めます。

対象を把握データ・構成基準を決定承認した状態設定・変更適用と記録照合・是正差異を解消利用状況とサービスの変更を基準へ反映する
図5 構成管理の循環 利用開始時、変更時、定期点検時、利用終了時に、それぞれ必要な範囲を確認します。

4.2 利用部門が実施する共通事項

ID管理行為残す記録
CM01利用範囲と責任者を定めます。SaaS、テナント、用途、利用責任者、実務担当者。
CM02データと構成を把握します。データの種類、設定、利用者、権限、共有先、外部連携。
CM03設定基準を決定し、承認します。適用条件、期待する状態、根拠、確認方法、承認者、版。
CM04基準を適用し、実際の状態を確認します。取得した設定値、確認範囲、取得日時、判定結果。
CM05変更を承認し、結果を記録します。変更理由、対象、影響、承認、変更後の状態。
CM06定期的に構成と基準を見直します。点検日、対象範囲、差異、基準の変更内容。
CM07差異を是正し、残るリスクを処理します。担当者、期限、是正後の確認、例外・受容の記録。
CM08利用終了に伴う処理を行います。データ回収、ID・連携の失効、削除の確認。

CM番号は本書の管理要求を識別する番号です。第3章の管理領域との対応を各記録に付け、2線が実行状況を確認できる形で保存します。

第4章|設定基準の作り方

4.3 セキュリティに関係する構成を選ぶ

対象は、データへの到達、操作権限、外部への転送、保護、監視、復旧に影響する構成とします。業務上の承認経路や出力先も、この条件に該当する場合は対象に含めます。

領域設定基準に定める内容確認する対象の例
認証利用者の本人確認方法、管理者の認証条件、連携用IDの認証方法。組織共通の認証、個別ログイン、緊急用アカウント。
ID・権限業務に必要な役割、権限の付与者、異動・退職時の変更。グループ継承、個別付与、特権、外部利用者。
共有・公開共有可能な情報、相手、公開範囲、有効期限。組織全体の制限、領域設定、既存リンク、個別共有。
外部連携利用目的、接続先、データ範囲、許可する操作、管理者。連携アプリ、API用の認証情報(トークン)、定期処理。
保存・復旧保存期間、削除条件、復旧方法。データ種別ごとの設定、保管先、復旧手順。
保護・操作記録必要な保護機能、記録する操作、保存期間、通知先。重要操作の承認、管理ログ、ログ取得の成否。

4.4 業務上の条件を判定可能な形にする

基準は、組織の情報管理方針と適用される義務を確認して作成します。サービスの公式仕様や推奨値は、実装方法を決める際の根拠として参照します。利用責任者が業務上の妥当性を確認し、所定の権限で承認します。

例えば、顧客契約書の共有では「承認された相手だけが閲覧できること」を要求します。その実装として、本人確認を伴う招待制の共有と、有効期限を設定します。

基準の項目記載例
対象・条件顧客契約書を保存する領域。取引先への共有があります。
期待する状態閲覧者は承認された担当者と取引先に限定します。
確認方法共通設定、個別リンク、グループ経由の権限を照合します。
機能上の制約有効期限の設定機能がない場合は、期限管理と失効の代替手順を記録します。
承認利用責任者が共有相手と必要期間を承認します。

基準どおりの機能を利用できるかは、契約プランと管理権限を含めて確認します。実装上の制約は、代替策と残余リスクの評価に引き継ぎます。

第4章|点検周期と変更時の管理

4.5 定期点検を年次・半期で回す

定期点検は、全SaaSについて前回完了日から12か月以内を基本とします。変更が多い対象や、前回の点検で管理漏れ・再発が見つかった対象は、6か月以内の点検を検討します。周期は利用部門が提案し、2線が妥当性を確認します。

実施する時点確認する範囲担当者の作業
利用開始前データの取扱条件、設定基準、初期構成。実データの利用開始前に、必要な設定を適用して確認します。
変更時変更する項目と、その影響先。変更理由と承認を記録し、変更後の状態を確認します。
定期:原則12か月以内管理対象の一覧、基準の妥当性、実構成、例外。現在の情報を取得して照合し、差異を是正します。
定期:必要な対象は6か月以内変更が多い範囲や、継続確認が必要な範囲。年次と同じ判定規則で、確認間隔を短くします。
是正後・利用終了時修正箇所、ID・連携の失効、データ処理。処理結果を再確認して完了を記録します。

12か月・6か月は本書の運用案です。損害が短時間で発生するシナリオには、第6章で示す事前制限や短周期の監視を組み合わせます。

4.6 日々の変更は既存の業務手続で管理する

日常の変更は、入退社、異動、権限申請、外部共有、連携追加などの業務手続に組み込みます。定型作業は、承認済みの条件と手順に従って実施します。重要な変更は、個別の影響確認と承認を行います。

変更の種類管理方法実施後の確認
定型変更利用者追加など、承認済みの条件内で処理します。付与された権限と、申請内容の一致を確認します。
重要変更管理者権限、共有範囲の拡大、連携追加などを個別承認します。変更後のアクセス範囲と、関連する保護設定を確認します。
提供者の機能変更通知の受領担当を定め、利用中の範囲への影響を確認します。既定値、既存データへの適用、基準の更新要否を確認します。
緊急変更実施者、理由、変更内容を記録し、所定の手続で事後承認します。復旧後の状態と、暫定措置の終了を確認します。

自動取得や既存の申請システムで確認できる記録は、定期点検にも利用します。利用部門は、確認した範囲と時点が分かる形で記録を整理します。

第4章|人とAIが使う判断規則

4.7 入力・判定・記録を定義する

担当者やAIによる解釈の差を抑えるため、各要求には適用条件、期待する状態、確認方法、判定結果を定めます。判断の根拠となる事実と、業務上の承認を、それぞれ記録します。

定義する項目記載する内容
対象SaaS、テナント、設定・権限・共有等の対象ID。
適用条件データの種類、利用機能、共有先など、要求が適用される条件。
期待する状態許容する値、権限の範囲、共有相手、期限。
証跡取得元、取得日時、対象範囲、取得件数、基準の版。
判定方法条件と実値を照合する規則。確認不足の扱い。
処理差異を解消する担当者、期限、承認、是正後の確認。

4.8 同じ事実に同じ判定を付ける

確認された状態判定次に行うこと
適用する要求について、必要な範囲の証跡がそろい、実値が基準を満たします。適合確認日時と適用した基準の版を記録します。
適用する要求について、実値と基準の差を確認しました。不適合是正又は例外の承認手続を進めます。
設定値の取得失敗、取得範囲の不足、古い証跡により確認が残ります。未検証不足範囲、確認担当者、確認期限を記録します。
利用形態を確認した結果、要求の適用条件から外れます。非該当適用条件と確認した利用実態を記録します。

必須機能の不足が確認された場合は、不適合として理由を記録します。例外が承認された場合は、判定に加えて承認者と有効期限を記録します。残余リスクは、対策の実際の効果に基づいて評価します。

4.8.1 共有設定の確認例

「顧客契約書の閲覧者は承認した相手に限定する」という基準を確認します。組織共通の共有制限に加え、既存の共有リンクと個別権限を取得します。取得できた範囲が必要範囲を満たし、承認先と一致した場合に適合とします。

4.8.2 AIによる作業の扱い

AIは、設定項目の抽出、証跡の整理、規則に沿った照合、変更案の作成に利用します。固定値や一覧の比較には、定義済みの処理を使います。調査には読取専用の権限を用い、設定変更は所定の承認後に実行します。

管理画面や文書の内容は、評価対象のデータとして扱います。実行する指示は承認済み手順に限定します。判定が分かれた項目は、担当者が根拠を確認し、判断規則へ反映します。

第5章|構成管理による低減効果

5 構成管理の効果と残余リスク

5.1 共通対策によって何が改善するか

構成管理により、利用部門は管理対象と基準を把握し、設定の差異を発見・是正できます。効果は、設定不備の発生を抑えることと、発生した不備を解消することに分けて確認します。

構成管理の活動期待する低減効果効果を確認する根拠
対象と基準の整備設定の見落としや、担当者ごとの判断差を減らします。対象一覧、基準、適用条件、担当者間の判断の一致。
利用開始前の確認初期設定による過大な公開や権限付与を減らします。初期設定の取得結果、差異、是正後の状態。
変更の承認と確認予定された変更に伴う設定ミスを減らします。変更内容、承認、変更後の検証結果。
定期点検継続して残る設定不備を発見し、解消します。点検範囲、発見日、是正日、再確認結果。
権限・連携の整理不要なアクセス経路と、侵害時に使われる権限を減らします。権限の棚卸し、業務上の必要性、失効の実施記録。
例外・是正の管理処理の遅れを把握し、担当者による対応を進めます。担当者、期限、進捗、期限超過時の対応。

5.2 実施結果から効果を確かめる

効果の評価では、管理対象の範囲、基準の内容、実際の適用、是正までの時間を確認します。例えば、不要な連携を失効した記録があれば、その連携経由でアクセスされる範囲を低減したと評価できます。

点検実施率は、共通対策が回っているかを示します。対象の把握率や是正までの時間は、管理の到達範囲と処理速度を示します。これらを、リスクシナリオごとの残るアクセス経路と合わせて評価します。

確認する指標算定・確認方法
対象の把握状況台帳と、契約・利用者・連携等の一覧を照合します。
点検の実施状況期限内に完了したSaaSの数と、未完了の対象を確認します。
是正までの時間不備の発見から、是正後の確認までの日数を記録します。
不備の再発同じ対象や原因による不備を、前回結果と照合します。

共通対策の低減効果は、対象と証跡に基づいて個別に説明します。事故発生確率を算定する場合は、発生実績や曝露条件を用いた別の分析が必要となります。

第5章|点検間隔と残る時間

5.3 点検頻度によって残るリスクが変わる

設定不備が点検の直後に発生した場合、次の定期点検まで存在し続けることがあります。年次を半期へ変えると、この期間を短縮できます。

年1回半年に1回0か月6か月12か月点検点検点検点検点検継続する不備の発見まで、最大で約12か月次回点検まで、最大で約6か月↑ 点検直後に不備が発生
図6 定期点検の間隔と不備が残る時間 次回点検で不備を必ず発見できると仮定した模式図。是正までの時間は別に考慮します。
点検周期平均未検知期間最大未検知期間の目安
年1回:12か月間隔6か月約12か月
半年に1回:6か月間隔3か月約6か月

表は、不備の発生時刻が点検間で一様に分布し、次回点検で必ず発見されると仮定した計算例です。点検間隔をTとすると、平均未検知期間はT/2となります。発見から是正までの時間rを加えると、平均してT/2+rの間、不備が存在します。

5.4 点検時点の状態から確認できる範囲

現在の設定値からは、点検時点で継続している不備を確認できます。短時間で設定が変わり、その後に元へ戻った場合は、変更履歴や操作記録を確認します。

例えば、顧客資料が一時的に社外へ公開され、その間に取得された場合、後日の共有設定は適切な状態になっていることがあります。被害の確認には、公開された時点と、その期間のアクセス記録が必要となります。

共通対策の後に残る事項評価する内容
次回点検までの期間その間に成立し得るアクセスと、対象データの重要性。
短時間の構成変更変更履歴と操作記録から追跡できる範囲。
是正までの処理時間発見、連絡、判断、設定変更にかかる時間。
発生済みの損害取得済みデータ、変更された情報、業務停止への対応。

上の計算が示すのは、仮定の下での未検知期間です。損害の発生可能性は、共有先、アクセスの機会、保護機能などを含めて評価します。

第5章|残余リスクの評価例

5.5 対策後に残る経路を再評価する

対策を適用した後も残る損害の可能性を「残余リスク」と呼びます。構成管理で確認した基準と実設定を踏まえ、残る経路について影響と発生可能性を再評価します。既存の認証、データ保護、監視機能の効果も、適用状況を確認して反映します。

利用条件と想定する損害共通対策で確認した状態残るリスクと評価例
公開用の日程情報を、少人数で管理します。共有先の誤設定による影響は限られます。利用する情報の範囲を定めました。共有設定と利用者を年次・変更時に確認しました。影響:低/可能性:低。
残余リスク 低。共通の管理を継続します。
部門の内部資料を共同編集します。誤ったアクセスにより、部門内の対応や修正が必要となります。役割別の権限を整理しました。外部共有を限定し、変更と半期点検を記録しました。個別付与の変更や利用者の誤操作が残ります。
影響:中/可能性:中。
残余リスク 中。
全社で顧客契約書を共有します。取引先ごとの個別共有と連携アプリが多数あります。共有基準を整備しました。不要な権限・連携を整理し、半年ごとに確認しました。点検間の共有変更、承認済み権限の悪用、連携先の侵害が残ります。
影響:高/可能性:中。
残余リスク 高。
少人数の業務担当者が、全従業員の情報へアクセスする連携を管理します。連携の用途と権限を承認しました。認証情報の管理と定期確認を行いました。必要な連携権限を悪用された場合の影響が大きいです。
影響:高/可能性:中。
残余リスク 高。

表は、記載した条件に基づく架空の評価例です。実際の評価では、各対策の適用範囲と運用記録を確認します。

5.6 大規模・多機能のSaaSで確認すること

大規模なSaaSでは、データ量、利用部門、権限の種類、個別共有、外部連携が増えやすくなります。さらに変更が頻繁な場合、定期点検で確認した状態からの変化も多くなります。

このような利用では、点検間の変化や多数の権限関係を追跡する負荷が増します。残余リスクを評価する際は、管理対象の多さ、変更頻度、被害範囲、必要な対応速度を確認します。

構成管理で整理できた部分と、現在も成立する経路を記録すると、追加対策が必要な箇所が明確になります。例えば、全社共有では「設定の継続確認」と「データ取得の監視」を別々の必要機能として検討できます。

第6章|追加対策の判断

6 残余リスクに応じた追加対策

6.1 残るリスクと必要な対応速度から選ぶ

追加対策は、残余リスクが組織の許容範囲を超えるシナリオに適用します。まず、既存の機能と運用で対応できる範囲を確認します。そのうえで、取得する情報、制限する操作、検知・是正までの時間を定めます。

残余リスク対応方針の案
高追加低減を優先します。対応までの利用条件と、受容の承認者を定めます。
中影響範囲と残る経路を確認し、追加対策又は条件付き受容を判断します。
低共通の構成管理を継続します。用途や権限が変わった時点で再評価します。
重要操作の事前制限公開・権限付与の制限変更通知と担当者への連絡事前制限と継続的な監視構成・権限・操作を自動で確認検知後の停止・失効まで準備年次点検を中心に管理変更時の確認と記録次回点検までの残余リスクを確認変更管理と差分確認を強化半期点検を検討対象一覧と設定取得を自動化短時間で対応が必要定期点検時の対応を許容管理対象・変更が少ない管理対象・変更が多い
図7 必要な対応速度と管理量から対策を選ぶ 追加対策の選択図。リスク評価には第3章の高・中・低を用います。

6.1.1 対策に求める時間を決める

構成情報を取得するまでの時間、分析時間、担当者の判断待ち、アクセス停止までの時間を確認します。合計が被害の発生・拡大に間に合うように、監視頻度と対応手順を設計します。

顧客契約書が公開直後に取得され得る場合は、共有先の事前制限を優先します。短周期の設定確認と操作監視は、意図しない変更の発見や、被害範囲の把握に利用します。

第6章|必要な機能の選択

6.2 残余リスクを必要な機能に対応付ける

対策の選択では、対象のSaaSで使える機能を確認します。必要な機能を既存の契約で利用できる場合は、その適用を検討します。追加機能が必要な場合は、対象範囲、取得できる情報、運用負荷を比較します。

残余リスク必要な機能実装する方法の例
点検間に設定や権限が変わります。設定を短周期で取得し、基準や前回状態と照合します。SaaSの管理機能、管理APIによる照合、SSPM。
多数の個別共有や権限の組合せから、重要データへ到達できます。利用者・グループ・共有先の関係を調べ、実効的なアクセス範囲を把握します。SaaS内の権限分析、SSPM等の対応機能。
連携アプリの権限が広い、又は連携先が侵害されます。連携の一覧化、権限の制限、活動の確認、アクセスの失効。SaaSのアプリ管理、SSPM、連携アプリの監視機能。
正規の権限で機密情報を大量に持ち出します。情報の内容と出力先を確認し、操作を制限・検知します。データ漏えい防止機能(DLP)、SaaSの操作制限、活動分析。
盗まれたアカウントやセッションが悪用されます。認証・端末・SaaS操作を関連付け、アクセスを止めます。ID基盤、端末監視、SIEMによる分析と対応。
提供者の障害で業務やデータ利用が停止します。データ回収、復旧、代替業務、提供者との連絡。SaaSの復旧機能、別保管、契約と業務継続手順。

6.2.1 機能の確認で記録する事項

確認項目記録する内容
対象範囲対象サービス、プラン、テナント、設定、ID、データ形式。
取得できる情報設定値、権限関係、操作、取得日時、未取得の範囲。
取得と対応の速度取得周期、遅延、通知、判断、是正までの時間。
運用担当通知を受ける人、調査する人、設定を変更する人。
継続に必要な作業接続権限、APIの変更対応、基準更新、誤検知の調整。

表の方法は機能を実装する候補です。対応範囲は、各サービスと製品の仕様で確認します。例として、Microsoftの公開資料には、SaaSの構成評価と、OAuthアプリを経由する攻撃経路の可視化(プレビュー)が記載されています。[8]

第6章|SSPMを使う場面

6.3 SSPMが提供する情報と評価

SSPM(SaaS Security Posture Management)は、SaaSの構成や権限などを取得し、セキュリティ上の状態を評価する仕組みです。製品によっては、外部連携、データの公開範囲、不審な操作も扱います。AppOmniの公開資料では、これらを含むSaaS向けの機能が説明されています。[9]

対象得られる情報・機能の例リスク低減への使い方
設定基準との差異、前回取得時からの変更。定期点検の間に生じた逸脱を発見します。
ID・権限管理者、休眠ID、個別付与、グループによる継承。不要な権限を整理し、強い権限の変更を確認します。
外部連携連携アプリ、許可された操作範囲、接続先。重要データへ到達する連携を把握して制限します。
データの公開範囲共有先と実際にアクセスできる主体の関係。広く共有された重要データを特定します。
操作・活動SaaS固有の操作、不審なアクセス、検知結果。構成情報と組み合わせ、調査すべき活動を抽出します。

6.3.1 SaaS内部の関係を取得する必要性

全社ファイル共有では、所属グループ、フォルダーの継承、個別リンク、連携アプリが重なってアクセス範囲を作ります。リスクを評価するには、これらをまとめて把握する機能が必要になります。

必要な情報を既存製品から取得できるかを確認します。SSPMがその情報の取得と解析を提供する場合は、追加対策の候補となります。代替方法を比べる際は、同じ対象と取得周期で運用できることを条件とします。

6.3.2 導入によって増える管理対象

管理するもの決めておく事項
SaaSへの接続権限必要な権限、認証情報の管理者、更新・失効方法。
収集した情報利用者情報や設定情報の保存先、参照権限、保存期間。
収集処理接続エラー、取得不足、遅延を確認する担当者。
是正処理変更の承認、影響確認、実施後の再確認。

残余リスクへの効果は、取得・評価できた範囲と、是正までの運用に基づいて判断します。

第6章|SIEMでの相関分析

6.4 構成情報と他のログを組み合わせる

SIEM(Security Information and Event Management)は、複数のシステムから記録を集めて分析する基盤です。SSPM等から得た権限や共有範囲に、認証、端末、SaaSの操作記録を組み合わせると、調査対象を具体化できます。Google Security Operationsには、AppOmniの評価結果、操作イベント、アラートを取り込む方法が公開されています。[10]

構成・権限の情報SSPM・SaaS管理機能SaaSの操作記録共有変更・閲覧・データ取得認証・端末の情報ID基盤・端末監視SIEMで相関分析主体・対象・時刻を対応複数の事実から判断調査・対応共有停止ID・連携の失効
図8 構成情報と操作記録を組み合わせる 必要なデータを取得できる範囲で、アカウントやアプリの活動を調査するための構成例。

6.4.1 顧客契約書の取得を調査する例

情報源確認した事実の例分析での用途
SSPM又はSaaS管理機能利用者Aは顧客契約書へ広くアクセスできます。取得できるデータの範囲を確認します。
端末監視利用者Aが使用する端末で侵害の兆候を検知しました。アカウントやセッションの悪用を疑う根拠にします。
認証・SaaS操作記録利用者Aの接続元が変わり、契約書の取得が増えました。主体と時刻を対応付け、通常業務との違いを調べます。
調査・対応の記録業務担当へ確認し、必要な共有停止やアクセス失効を実施しました。被害の拡大を抑え、実施結果を確認します。

上表は必要な記録が取得できる環境を想定した例です。検知後は、業務上の一括処理などを確認して対応を判断します。

6.4.2 相関分析を成立させる条件

テナント、利用者、アプリ、対象データを識別するIDを対応付けます。操作の発生時刻と、構成を取得した時刻も記録します。過去の操作を評価する際は、その時点の構成を確認します。

必要な記録の取得範囲、受信の遅れ、欠損を監視します。通知先と、共有停止・ID失効を行う権限を定め、検知から対応までの経過を保存します。

第6章|2線による確認と見直し

6.5 2線が実行状況と残余リスクを確認する

2線は、利用部門の構成管理が定めた範囲と周期で実施されているかを確認します。その結果をもとに、残余リスクの評価と追加対策の必要性を検証します。

確認する観点2線が行うこと主な確認記録
対象の把握台帳を契約・利用者・連携の情報と照合します。SaaS一覧、利用範囲、責任者。
基準の妥当性データの性質と利用方法に合う基準か確認します。取扱条件、設定基準、参照する仕様。
実施状況年次・半期、変更時、是正後の確認を点検します。実施日、変更履歴、取得した実設定。
判定の根拠重要な項目を再取得し、報告と照合します。対象ID、取得範囲、基準の版、判定理由。
残余リスク共通対策の効果と、残る経路を確認します。影響、可能性、高・中・低の評価。
追加対策必要な機能、適用範囲、検知・是正までの時間を確認します。既存機能の適用状況、対応記録、未対応の範囲。

6.5.1 全件の実施状況と重点対象の詳細

全SaaSについて、責任者、適用基準、点検日、未処理事項、残余リスクを確認します。詳細な実設定の検証は、重要なデータ、多数の権限・連携、変更の多い領域、不備の再発箇所を優先します。

抽出して確認する場合は、対象全体、抽出件数、選定理由、確認済み範囲を記録します。未検証事項には、追加確認の担当者と期限を設定します。

6.5.2 一つのリスクを継続して記録する

記録項目全社ファイル共有の記載例
対象とリスク顧客契約書が、意図した相手以外に取得されます。
共通対策と周期共有基準、変更承認、権限整理、半期点検。
確認した効果不要な共有と連携を解消し、既存の権限を整理しました。
残余リスク個別共有の変更や、必要な権限の悪用が残ります。影響:高/可能性:中。
追加対策共有・権限の短周期確認、操作記録の相関分析、アクセス停止。
担当と見直し1線が是正を担当します。2線が有効性を確認します。用途・権限・連携の変更時に再評価します。

利用部門は、この記録を使って管理内容を更新します。2線は、組織全体で残るリスクと必要な追加対策を取りまとめます。

参考資料|定義・構成管理・リスク評価

参考資料

参照確認日:2026年11月7日。本文の角括弧の番号から、該当資料へ移動できます。

[1] NIST CSRC Glossary:Software as a Service(SaaS)

SaaSの定義。第1章で、提供者のアプリケーションをネットワーク経由で使う形態を説明する際に参照。

https://csrc.nist.gov/glossary/term/software_as_a_service

[2] Microsoft Learn:Shared responsibility in the cloud

SaaSにおける共有責任の説明。データ、設定、IDの利用者側管理を整理する際に参照。個別サービスの分担は、その仕様と契約に従います。

https://learn.microsoft.com/en-us/azure/security/fundamentals/shared-responsibility

[3] CSA:SaaS Security Capability Framework(SSCF)

利用者に提供されるセキュリティ機能の枠組み。公開ページで案内されているSSCF v1.0.1を参照対象とします。

https://cloudsecurityalliance.org/artifacts/saas-security-capability-framework

[4] CSA:Introducing the SSCF v1.0

CCC、DSP、IAM、IPY、LOG、SEFの6領域を確認。本文のリスク例と管理作業は、これらの領域を使った本書の整理。

https://cloudsecurityalliance.org/blog/2025/09/24/introducing-the-saas-security-capability-framework-sscf-v1-0-raising-the-bar-for-saas-security

[5] NIST SP 800-128:Guide for Security-Focused Configuration Management of Information Systems

セキュリティを構成管理に組み込む考え方を参照。第4章の具体的な管理要求と点検周期は、利用組織向けに作成した案。

https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/128/upd1/final

[6] NIST SP 800-30 Rev. 1:Guide for Conducting Risk Assessments

リスク評価の考え方を参照。本文の高・中・低の定義と組合せ表は、本書の運用案。

https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/30/r1/final

参考資料|管理範囲・追加対策

追加対策に関する資料

[7] CSA:Cloud Controls Matrix and CAIQ v4.1

提供者、事業継続などを含むクラウド全体の管理領域を参照。SSCFで扱う利用者向け機能の評価を補う枠組み。

https://cloudsecurityalliance.org/artifacts/cloud-controls-matrix-v4-1

[8] Microsoft Learn:SaaS security posture management overview

SaaS構成評価とOAuthアプリの攻撃経路可視化(プレビュー)の実装例。対応するサービス、プラン、接続条件は利用時に確認します。

https://learn.microsoft.com/en-us/defender-cloud-apps/posture-overview

[9] AppOmni:The SaaS Security & AI Platform

構成、権限、連携、データ露出、活動分析を扱う製品例。第6章では公開されている機能の種類を参照。実環境での効果は適用範囲と運用記録から評価します。

https://appomni.com/platform/

[10] Google Cloud:Collect AppOmni logs

構成評価の結果、操作イベント、脅威アラートをSIEMへ転送する機能と取り込み手順を参照。相関分析の具体例は本書の設計例。

https://docs.cloud.google.com/chronicle/docs/ingestion/default-parsers/appomni

本書の提案と適用範囲

項目本書での扱い
国際フレームワークSSCFの6領域に合わせて管理対象を分類します。提供者や事業継続の確認にはCCMを併用します。
組織向けの提案1線・2線の分担、CM01〜CM08、年次・半期の周期、判定規則、3段階のリスク評価。
計算と事例未検知期間は明示した仮定による計算例。リスクの評価例と相関分析例は、記載した条件を前提とします。
正式な運用への適用利用部門と統制部門が、対象、担当、周期、承認権限、証跡の保管方法を確定します。